ホロライブの配信を盛り上げるファンコンテンツの一つに「切り抜き動画」があります。
しかしその中には、悪質な手法で注目を集めようとする「害悪切り抜き師」と呼ばれる存在もいます。
害悪切り抜き師とは、誤解を招く編集や炎上狙いのタイトル・サムネイル、文脈を無視した切り抜き投稿などによってタレントや視聴者に悪影響を及ぼす切り抜き投稿者のことです。
害悪切り抜き師の定義と行動パターン
「害悪切り抜き師」は、ホロライブファンの間で悪質な切り抜き投稿者を指す呼称です。
通常、ファンによる健全な切り抜きは配信の名場面を紹介し、多くの人にVTuberの魅力を伝える役割を果たします。
それに対して害悪切り抜き師は、再生数や収益を優先するあまりコンテンツの健全さを損ねる手法をとるのが特徴です。
以下に典型的な行動パターンを挙げます。
配信中に動画をアップロードする
ホロライブには「元動画のアーカイブ公開前の切り抜き投稿は禁止」というルールがあります。
しかし、害悪切り抜き師は視聴を集めるため、最速で投稿しようとします。
具体的には、ライブ配信の最中に切り抜き動画を限定公開 (動画URLを知る者だけが視聴でき、チャンネルトップページYouTube検索には表示されない設定) でアップロードし、配信終了直後に一般公開設定に切り替えるという手法です。
その結果、元動画のアーカイブの方が切り抜き動画よりも「後」に公開される事態が生じます。これにより元動画がYouTubeのシステム上「他動画からの流用」とみなされ、収益化剥奪などの不利益を被るケースも発生しています。
一つの配信から過剰な数の切り抜きを作成する
通常の切り抜きは配信ごとに主要な場面を1〜2本にまとめますが、害悪切り抜き師は一配信から複数の動画を作成します。
タレントのコンテンツを必要以上に切り刻み、自分のチャンネルの再生回数稼ぎに利用する搾取的な行為です。
非公開化された配信の無断再投稿
配信終了後に非公開・削除となったアーカイブから、許可なく切り抜きを投稿するケースもあります。
公式に公開されていない場面を勝手に拡散する行為であり、コンテンツ提供者の意図に反する悪質な例です。
こうした手法をとる害悪切り抜き師たちは、しばしば「営利目的の業者」としてファンから問題視されています。
彼らが跋扈する背景には、「稼げるから」という単純な動機があります。
一部の悪質チャンネルは総再生回数が1億回を超え、数千万円規模の広告収入を得ていると推定されています。
ホロライブの人気に便乗して過激な動画を量産すれば、大きな利益が出るため、それを目当てに良識を欠いた切り抜き行為が横行しているのです。
ホロライブ公式・タレントによる切り抜きルールと言及
ホロライブを運営するカバー株式会社は、ファンによる切り抜き動画を許容していますが、明確なガイドラインを定めています。
2022年6月には公式サイトに「切り抜き動画に関するガイドライン」が公開され、遵守すべきルールが明文化されました。
主なポイントは以下の通りです。
切り抜き動画は元配信のアーカイブが公開されるまで投稿してはならない
これは、元動画アーカイブが公開される前に切り抜き動画が公開されることによりタレントのチャンネルに悪影響を及ぼすリスクへの対策です。
切り抜き動画の概要欄には、元となった配信のURLとタイトルを記載する
出典を明確にすることで、公式コンテンツとの関連性を示す意図があります。
メンバーシップ限定配信や有料ライブなど、一般公開されていないコンテンツの切り抜きは禁止
特別な許可がない限り、有料コンテンツを再編集・公開することは認められていません。
内容やサムネイルが不適切と判断された場合、運営側で削除措置を行うことがある
ガイドラインでは「所属タレントの心情に配慮し、不快と感じる創作活動は控えてください」とも明記されています。
ルールを守っていれば、YouTube等での広告収益化も条件付きで許可されています。
また、切り抜きチャンネルの登録制度も導入されており、公式フォームからチャンネル情報を登録できます。
これにより、違反があった場合は事前に削除依頼が送られ、YouTubeからの即時ペナルティを回避できます。
タレント本人も、悪質な切り抜き行為に対して言及しています。
例えば星街すいせいは「配信のアーカイブ化前に切り抜きをアップしないでほしい」とSNSで呼びかけました。
実際に問題となったケース
害悪切り抜き師による具体的な問題は、大きく分けて二種類あります。
一つは、YouTube上のチャンネル運営や収益面での被害です。
もう一つは、炎上や誹謗中傷など風評被害的な側面です。
前者については、ホロライブに所属する複数のタレントが収益化停止の被害を受けた事例が存在します。
2020年から2021年頃にかけて、さくらみこや夏色まつりなどの人気メンバーが突然、YouTubeから「再利用されたコンテンツ」と判定され、チャンネルの収益化が一時的に停止されました。
夏色まつりはSNSで、「誰にでも起こりうることだから防ぎようがないけど気をつけてほしい」とファンに呼びかけました。
こうした措置は、特定の切り抜き動画が原因と断定されているわけではありません。
しかし、配信直後に同内容の切り抜きが他チャンネルに投稿されることで、自動検出システムが「転載」と誤認するリスクがあると指摘されています。
ホロライブタレントの中には、少なくとも4人がこの理由で収益化を剥奪されたと報告されています。
これは切り抜きの投稿タイミングや形式が、タレント本人に重大な損害を与え得ることを示しています。
一部のチャンネルは、配信中に切り抜きをアップロードし、終了直後に公開するという手法を繰り返していました。
一部の動画は非公開になった配信の内容を無断で再編集し、視聴者からの指摘を受けても削除に応じなかったとされています。
このような行為は、タレント本人や運営の判断を無視し、意図的に信頼を損なうものと見なされています。
後者の問題は、誤解を招く切り抜きによる炎上や風評被害です。
切り抜き動画は短く編集されるため、前後の文脈が伝わりにくくなります。
発言の一部だけを切り取った動画が、本来の意図とは異なる意味で拡散されることがあります。
常闇トワは、過去に自身の配信内容が一部切り取られて誤解を招き、批判の声が寄せられた経験があると語っています。
配信の中で「悪意ある切り抜きによって炎上した」と振り返り、悔しさをにじませました。
こうした状況は、本人が本意ではない釈明や謝罪を迫られる事態につながることもあります。
悪質な切り抜きが原因でSNSが荒れ、他のタレントやファンにまで迷惑がかかることもあります。
断片的な映像だけを見て誤解した視聴者が、批判的なコメントを大量に投稿することがあるからです。
タレントにとっては、配信でのびのびと振る舞うことが難しくなり、精神的な負担にもつながります。
ファンコミュニティの対応と議論
ホロライブファンの間では、こうした害悪切り抜きの問題に対して強い懸念と警戒心が広がっています。
SNSでは、有志による注意喚起やチャンネル名の共有、通報呼びかけなどの動きが見られます。
たとえば、「ホロライブ悪質切り抜き調査団」と名乗る有志が、調査内容をまとめた記事を公開し、視聴者に対して冷静な判断を求めました。
この記事では、問題のあるチャンネルの特徴や行動パターン、避けるべき再生行動などが丁寧に説明されています。
ファンの手によって、コミュニティの健全化を守ろうとする動きが強まっていることがうかがえます。
一方で、切り抜きという文化自体は多くのファンにとって重要な存在です。
ホロライブを知るきっかけになったのが切り抜きだったという人も少なくありません。
実際、質の高い切り抜き動画は、タレントの魅力を広め、配信に足を運ぶ新規ファンを増やす役割を果たしています。
たとえば、有名な切り抜き師「なめたけ」は、過去の配信を丁寧に編集し、文脈やオチを大切にした動画を数多く投稿しています。
ファンからは「助かる」「わかりやすい」「編集センスがすごい」といった賞賛の声が寄せられています。
このような切り抜きは、公式にも歓迎される二次創作の一例とされています。
今後の指針と切り抜きとの向き合い方
ホロライブファンとして、今後どのように害悪切り抜きと向き合うべきか。
まず、公式ガイドラインをよく理解し、ルールを守ることが大前提です。
視聴者の立場では、ルール違反と思われる切り抜き動画を再生しない、共有しないという行動が重要です。
YouTubeの通報機能や、カバー株式会社の通報フォームを活用することも一つの選択肢です。
ファン一人一人の意識が、コミュニティ全体の質を高める力になります。
一方で、切り抜き動画はホロライブの魅力を広める有効な手段でもあります。
だからこそ、信頼できる切り抜き師の活動を応援し、正当な評価を与えることも大切です。
切り抜きを投稿したいと考えるファンは、タレントへの敬意と愛をもって編集に取り組むべきです。
誤解を招く編集を避け、タイトルやサムネイルでも誠実な姿勢を貫くこと。
それが、長く愛されるコンテンツを生む基盤となります。
最近では、YouTubeの規約も厳格化され、転載や独自性のないコンテンツに対する規制が強化されています。
海外では、字幕付け程度の編集で収益化していた切り抜きチャンネルが収益化停止を受けた事例も報告されています。
時代の流れとして、より高い編集力と責任感が求められるようになってきています。
管理人のひとこと
ホロライブというコンテンツが多くの人に愛されてきた背景には、タレントの魅力だけでなく、それを支えるファンの姿勢や文化の存在があると感じています。
切り抜き動画もその一翼を担う素晴らしい文化であり、私自身、たくさんの名場面を切り抜きで知り、笑い、感動してきました。
だからこそ、その文化が一部の心ない行為によって傷つけられるのは本当に残念でなりません。
今回の記事では、感情的に批判することなく、中立的な立場から事実と向き合い、今後のよりよい在り方を模索するために筆を取りました。
ファンが楽しむために生まれたコンテンツが、タレントにとっての負担になってしまっては本末転倒です。
ルールやマナーを守ることは、ファンとしての最低限の敬意であり、長くコンテンツを応援していくための土台だと思います。
参考文献
- カバー株式会社「二次創作ガイドライン」
https://hololivepro.com/terms/ - ホロライブ悪質切り抜き調査団
https://note.com/kirinuki_survey - YouTube公式「重複コンテンツに関するガイドライン」
https://support.google.com/youtube/answer/1311392?hl=ja
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