そもそも「生成AI使用疑惑」は何を指しているのか
一口に生成AI疑惑と言っても、論点は複数あります。
公式側が制作物に生成AIを使ったのではないかという疑惑があります。
ファンアートや二次創作に生成AIが混ざり、それが配信やSNSで取り上げられてしまう問題があります。
生成AIそのものではなく、映像加工や自動化処理が「AIっぽい」と見えて疑われるケースもあります。
話が噛み合わない最大の原因は、どのレイヤーの話をしているかが混線しやすい点です。
最初に押さえたい前提
見た目がAIっぽいという印象だけで「生成AI確定」とは言えません。
逆に、生成AIを使っていても見た目だけでは分からない時代になっています。
つまり、外見だけで断定する行為は高確率で誤爆を生みます。
この前提を外すと、議論はだいたい魔女狩りになります。
ホロライブ運営側のスタンスを一次情報で確認する
まず「運営として生成AIをどう見ているか」を確認します。
カバー社は株主総会の質疑応答を公開しており、その中で生成AIへのスタンスに言及しています。
内容としては、AIの活用と悪用は分けて考える必要があり、違法なものには法的措置も含めて対応するという趣旨です。
同時に、AIの活用という観点では理解を深めながら動向を注視し、慎重に検討を進めるという趣旨も述べています。
つまり「全部禁止でゼロ回答」というより、「危険な悪用は止めるが、技術そのものは見ていく」という立ち位置に読めます。
さらに同資料では、社内コンテンツでAIを用いた配信を既に実施していることや、業務でもAIツール導入などで改善が進んでいることに触れています。
ここで言うAIが必ずしも生成AIを意味するとは限らず、生成AI断定はできない点には注意が必要です。
「声の生成」に関する線引きも明示されている
ホロライブ側は音楽利用に関するガイドラインでも、AIに関係する線引きを示しています。
具体的には、楽曲から所属タレントの声を抽出してスピーチ生成に使う行為は許可しないという趣旨が明記されています。
この領域は権利侵害やなりすまし被害に直結しやすく、運営が強く警戒しているポイントだと読み取れます。
「新しいタレントを生成AIで作るのか」という論点
生成AI疑惑が燃える背景には、「人間が演じる存在を応援してきた文化」との衝突があります。
カバー社の経営トップが、生成AIで新タレントを作ることには慎重な趣旨を語った事例も報じられています。
ここは好みや思想の話になりやすい一方で、企業としての方向性を考える材料にはなります。
少なくとも「何でもAI化してコスト削減へ一直線」という単純なストーリーだけでは説明しにくい面があります。
事例1:大神ミオのサムネ差し替え騒動で起きたこと
生成AI疑惑が、どれだけ簡単に事故るかを示した象徴的な事例が2025年2月の大神ミオの件です。
配信サムネに使用されたファンアートについて、視聴者側から「画像生成AIではないか」という指摘が出ました。
その後、投稿先でAIを示すタグが付いたことが騒動の引き金の一つになったと整理されています。
大神ミオ本人は「サムネイルにAIイラストを使用しない方針がある」と説明し、サムネ差し替えや関連投稿の削除を行いました。
しかし後日、本人は「100%AIと確定する情報がない状態で早計に対応した」といった趣旨で、混乱を招いたことを謝罪しています。
一方で、作品の制作者側は生成AI使用を否定し、制作工程を公開する対応に踏み切ったとも報じられています。
それでも批判や誹謗中傷が止まらず、殺害予告にまで発展した旨も伝えられています。
この件が示したのは、AI判定の不確実さよりも先に、断定と攻撃が拡散すると取り返しがつかないという現実です。
事例1から読み取れる教訓
疑惑の段階で「確定」と言い切る言葉は、当事者の人生や活動を壊し得ます。
タグや見た目だけでの断定は、悪意がなくても誤爆の温床になります。
「していないこと」を完璧に証明するのは難しいという構造も、火に油を注ぎます。
ファン側が自衛するなら、断定ワードを避けるだけでも被害は減ります。
事例2:ホロライブカードゲームPV非公開で何が起きたのか
次に、公式制作物側の疑惑として大きく話題になったのが、ホロライブ公式カードゲームのPVを巡る一件です。
「アヤカシヴァーミリオン」のプロモーション映像について、映像制作手法に関して指摘が寄せられていたと公式が説明しています。
公式は制作工程を確認した結果、「原画イラストのクオリティを損なう映像制作手法」が一部に含まれていたと発表しました。
その原因は、本PVにおける社内の進行管理や確認体制に起因すると説明されています。
対応として、当該PVは非公開となりました。
また、今後は映像制作時の進行や確認プロセスを見直し、再発防止に努めるとしています。
加えて重要なのは、問題になった手法はPVの演出手法に関わるものであり、カードイラスト制作では一切そのような手法を採っていないと、公式が明確に否定している点です。
この発表は、疑惑に対して「確認した結果どうだったか」と「何が対象で何が対象外か」を切り分けて説明した形と言えます。
事例2で注意したいポイント
公式発表は「生成AIを使った」と断定していません。
公式発表が断定していない以上、外部が生成AI使用を確定情報のように扱うのは危険です。
ただし、品質を損なう手法が混入した事実と、確認体制に問題があったという自己認定は重い情報です。
「AIかどうか」だけを争点にすると、再発防止の論点がぼやけます。
本質は、外部協力を含む制作工程で何を許容し、どこで弾くのかという品質管理の問題でもあります。
なぜホロライブは「生成AI疑惑」が燃えやすいのか
ホロライブは二次創作文化と強く結び付いたコンテンツです。
配信サムネやSNSでファンアートが採用される文化が、ポジティブな循環を作ってきました。
一方で、生成AIが普及すると、ファンアートタグの中にAI生成物が混ざりやすくなります。
採用する側が意図せず火種を拾ってしまうリスクが上がります。
さらに、生成AIへの賛否が強いので、同じ出来事でも解釈が極端に割れます。
結果として、事実関係の精査より先に、陣営論で殴り合いが始まりやすくなります。
「生成AI使用」と「生成AIっぽい加工」は別問題になり得る
映像や画像の制作には、昔から自動補間やノイズ除去、アップスケールなど様々な処理があります。
それらが生成AIと同じカテゴリに見えることがあります。
逆に、生成AIを使っていても、人が仕上げれば違和感が消えることもあります。
だからこそ、見た目だけの断定が危険で、公式の説明や制作工程の確認が重要になります。
客観的に見たい人向けのチェックリスト
まず公式アカウントや公式サイトに告知があるかを確認します。
次に、告知が「生成AI」なのか「AI」一般なのか、言葉の範囲を確認します。
疑惑が出た時点で、関係者への凸や晒しをしないことを優先します。
どうしても問題提起するなら、断定語を避けて「指摘がある」「懸念がある」程度に留めます。
制作側の説明が出たら、対象範囲がどこかを読み分けます。
PVの演出の話なのか、原画やカードイラスト制作の話なのかで意味が変わります。
最後に、誰かを叩く快感のために情報を使っていないかを自分で点検します。
今後ホロライブが取るべき現実的な落としどころ
全面禁止を叫ぶだけでは、外部協力会社や制作工程の実態に追いつきません。
逆に、何でも許容すると、クリエイターやファンの信頼が崩れます。
現実的には、生成AIを含む自動化手法の許容範囲を制作ガイドラインとして整理し、チェック工程を明文化する方向が筋が良いです。
加えて、疑惑が出た時の一次窓口や説明のテンプレを整備すると、タレント個人に判断が集中しにくくなります。
株主総会の回答でも「活用と悪用を分ける」「慎重に検討する」という方向性が示されており、制度設計の余地は大きいはずです。
まとめ
ホロライブの生成AI使用疑惑は、一つの事件ではなく、複数の論点が絡む現象です。
ファンアート採用の文化があるからこそ、疑惑が表に出やすく、拡散も早いです。
大神ミオの件は、断定が誤爆と加害を生み得ることを示しました。
ホロカPVの件は、疑惑が出た時に公式が工程確認し、非公開と再発防止を宣言した事例として重要です。
運営の公式資料からは、AIを一律で否定するのではなく、悪用には法的対応を含める一方で、活用は慎重に検討する姿勢が読み取れます。
結局のところ、ファンができる最善策は「一次情報に寄せる」「断定しない」「攻撃しない」の3点に尽きます。
参考リンク
https://hololive-official-cardgame.com/news/post/38/
https://x.com/hololive_OCG/status/2006914346023289275
https://x.com/hololive_OCG/status/2008750657004871843
https://www.inside-games.jp/article/2026/01/07/175885.html
https://kai-you.net/article/91745
https://x.com/ookamimio/status/1891125127393189984
https://x.com/ookamimio/status/1892139639399678084
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS05169/586c328e/0707/42a2/ade3/269366fdca0c/20250812150956233s.pdf
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/streamer_watch/2038741.html
https://hololivepro.com/en/terms/
https://cover-corp.com/news/detail/20250409-01
https://www.nst.com.my/lifestyle/bots/2025/04/1190481/digital-divas-can-japans-vtuber-craze-crack-us
管理人のひとこと
生成AIの話題は、賛否より先に感情が走ると一気に地獄になります。
ホロライブは「人が人を応援する」文脈が強い分、少しの疑惑でも裏切りに感じる人が出やすいのだと思います。
でも、怒りをぶつける相手を間違えた瞬間に、推しの世界を一番傷つけるのはファン側になってしまいます。
公式の説明が出るまで待つことは、弱さではなく成熟だと私は思っています。


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