「来んなフェスにお前は。何しに来てるんだよマジで」──4月8日の配信で、星街すいせいが自身のファンに対してここまで強い言葉を使った。きっかけは、3日前に出演した横浜の都市型音楽フェス「CENTRAL 2026」での一部星詠みのマナー問題。他アーティストのステージ中にスマホをいじる、前方を占拠したまま微動だにしない、挙句に「変な歌」と口にする──SNS上で拡散されたこれらの報告に、本人がブチギレた形です。
ただ、この話は「星詠みのマナーが悪い」で終わる話ではないです。VTuber、アイドル、バンドが同じステージに立つ時代の音楽フェスが構造的に抱える問題が、ここに凝縮されています。
何が起きたのか──CENTRAL 2026・Echoes Baaステージの概要
まず事実関係を整理します。CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026は4月3日〜5日に横浜赤レンガ倉庫エリアで開催された都市型フェス。3日間で約9万人を動員し、全3ステージに計34組が出演しました。
星街すいせいが出演したのは最終日4月5日の「Echoes Baa 2026」ステージ。ラインナップはAooo、asmi、CANDY TUNE、CUTIE STREET、MAISONdes、羊文学、そして大トリの星街すいせい。同日のメインステージ「CENTRAL STAGE」ではHANA、優里、ちゃんみながパフォーマンスしており、フェス全体としてはジャンル横断型のイベントです。
フェス直前にはEchoes Baaカラーのオリジナルグッズも発表し、本人もかなり気合が入っていたのが伝わります。
星街すいせいにとって、これが初の野外フェス出演。生バンドを従えて「プリマドンナ」で開演し、「Stellar Stellar」「ビビデバ」「ソワレ」まで全10曲を披露。横浜港の花火が上がる中でのパフォーマンスは「圧倒的」と各メディアが報じています。ステージ自体は大成功だった。問題はその周辺で起きていました。
「地蔵」と呼ばれる行為──何がそんなに問題なのか
フェスにおける「地蔵」とは、目当てのアーティスト以外のステージ中に最前列付近を占拠したまま無反応でいる行為のこと。お地蔵さんのように微動だにしないからそう呼ばれます。今回のCENTRALで報告された具体的な行為はこんな感じです。
星街すいせいの出番までフロア前方でスマホをいじり続ける。他のアーティストが歌っている最中に「変な歌」など失礼な発言をする。前方エリアを長時間占拠し、そのアーティストのファンが前に行けない状態を作る。これらがSNSに投稿され、一気に拡散されました。
フェスのフロアは「みんなの場所」です。次のアーティストのファンに場所を譲り合い、知らない音楽に出会い、予想外の感動を持ち帰る。それがフェス文化の根幹にある暗黙のルール。地蔵はそのルールを真正面から壊す行為であり、だからこそフェス常連層からの批判が非常に厳しいのです。
星街すいせい、配信で怒りを爆発させる
フェスから3日後の4月8日、星街すいせいは配信でこの問題に言及しました。SNSで回ってきた報告を踏まえた上での発言です。
「来んなフェスにお前は。何しに来てるんだよマジで」
「すいちゃんのソロライブだけ来ればいいじゃん。そんな他のアーティストにリスペクトできないような人間がソロライブに来るのも私は嫌だけどね」
かなり強い言葉です。でもこの怒りには明確なロジックがある。星街すいせいが問題視しているのは単なるマナー違反ではなく、一部のファンの行動が「星街すいせいのファンはマナーが悪い」という評判を生み、アーティスト本人の信用まで傷つけるという構造です。フェスに呼ばれるということは、主催者と他の出演者からの信頼があってこそ。その信頼を一部のファンが壊しているわけです。
さらに踏み込んで、今後のライブにおける「すいちゃんは〜今日もかわいい〜!」コールの全面禁止も発表。従来は「開演10分前からはやらない」というルールでしたが、今後は出演者がコールを促した場合以外は一切禁止に変更されました。
↑こちらは2024年12月時点での「開演10分前から禁止」ルール。今回はここからさらに厳格化された形です。
配信コメント欄とXでの反応──賛否が真っ二つ
この配信、リアルタイムのコメント欄がかなりカオスでした。すいせいが怒りをあらわにするたびにBGMが切り替わり、「BGM変わったwww」「すいちゃん怒ってるw」と実況するコメントが流れる一方、「すいちゃんは〜今日もかわいい〜!」といういつもの空気を維持しようとするファンも。「自我持つな」というネタコメントが飛び交い、真面目な注意喚起なのに妙にお祭りムードになっていたのは正直どうなんだという感じです。
Xでの反応はもう少し真面目に割れました。擁護派は「アーティスト本人がここまでハッキリ言うのは覚悟がいる、よく言った」「正論すぎる」「フェスのマナーも知らないのに来るなは本当にそう」という声。一方で批判的な意見も少なくなかった。「ゲームしながらの配信で真面目な注意喚起されても響かない」「事前にフェスのマナーを周知しなかったのはアーティスト側にも責任がある」「注意喚起はいいけど、言い方がきつすぎて新規ファンが萎縮する」といった声です。
さらに厄介だったのが、星詠み同士の内輪揉め。マナー違反をした星詠みを批判する「自治厨」が発生し、その自治厨がマウントを取り始め、ファン同士でケンカになるという地獄絵図がXのタイムラインで展開されていました。すいせい本人もこの「自治厨」問題にも苦言を呈しています。注意喚起すること自体はいいが、それを武器にして他のファンを攻撃するのは違う、と。
結局のところ、配信の趣旨は正しくても、受け取り方は人それぞれ。ただ、アーティスト本人が「自分のファンの行動に責任を感じている」と示したこと自体に意味がある。これをどう受け止めるかは、星詠み一人ひとりの問題です。
星街すいせいだけの問題ではない──WEST.メトロック事件との類似
実はこれ、VTuberファンだけの問題ではまったくない。2025年5月のMETROCK 2025では、WEST.(旧ジャニーズWEST)のファンがほぼ同じことをやって大炎上しています。
最前列を朝から占拠し、前に出演したロックバンドのステージ中に地蔵状態。「つまんない」「早く終われ」と暴言を吐く。場所を譲ってほしいと言った他アーティストのファンに「うるさい」と返す。SNSでは「WEST.ファンのマナーが悪すぎて嫌いになった、もうロックフェスに来ないでほしい」という声が殺到しました。
パターンが完全に一致しています。特定のアーティストだけを目当てにフェスに来る→他のステージに興味がない→前方を占拠して地蔵→周囲のファンとトラブル→SNSで炎上→アーティスト本人の評判に飛び火。ジャンルを問わず、同じ構造の問題が繰り返されているのです。
“推し活”文化とフェス文化の根本的なズレ
なぜこの問題が繰り返されるのか。根っこには「推し活」の文化とフェス文化の本質的な衝突があります。
推し活の基本姿勢は「推しに全リソースを注ぐ」こと。推しのグッズを買い、推しの配信を追い、推しのライブに行く。その忠誠心は美しいものだし、推し活経済は2025年時点で数兆円規模とも言われる巨大市場です。
一方、フェスの文化的価値は「越境」にあります。普段聴かないジャンルに触れる。知らなかったアーティストに衝撃を受ける。ロック好きがVTuberの歌に鳥肌を立て、アイドルファンがバンドサウンドに目覚める。そのジャンル横断性こそがフェスの存在意義です。
「推し以外に興味がない」という態度は、推し活としては100点でも、フェスの文脈では完全にアウト。ここにズレがある。そしてこのズレは、VTuberやアイドルがフェスに呼ばれる機会が増えるほど、構造的に拡大していきます。
星街すいせいの立ち位置──VTuberがフェスに出る意味
ここで改めて、星街すいせいの現在地を確認しておきたいです。
2026年3月に個人事務所「Studio STELLAR」を設立。ホロライブとの関係は継続しつつ、アーティスト活動の主導権を自分で握る体制に移行しました。同時に発表された全国4都市アリーナツアー「Once Upon a Stellar」は、横浜Kアリーナ(2日間)、神戸、名古屋、福岡を回る自身最大規模のツアー。公式ファンクラブ「星詠み」も同時にスタートしています。
2月にはKアリーナ横浜で「SuperNova: REBOOT」を開催し、約1万8000人を動員。トロッコ演出で会場を駆け巡る姿が話題になりました。「ビビデバ」のMVは再生回数1億回を突破し、VTuber史上最速記録。THE FIRST TAKEへの出演も実現済み。
つまり星街すいせいは今、「VTuber」という枠を超えて音楽シーンの真ん中に立とうとしているアーティストです。CENTRALのEchoes Baaステージで羊文学やMAISONdesと同じ日に出演したのも、その文脈の延長線上にある。VTuberだからフェスに呼ばれたのではなく、音楽アーティストとして呼ばれた。
だからこそ、自分のファンが他のアーティストをリスペクトしない姿を見せることが許せなかったのだと思います。「VTuberのファンだから仕方ない」と括られることが、自分のやってきたことを全否定されるのと同じだから。
フェス運営側にも課題がある
ただし、ファンだけを責めるのはフェアではないです。フェス運営側にも構造的な課題があります。
まず前方エリアの入れ替え制。一部のフェスでは既に導入されていますが、CENTRALのような新興フェスではまだ整備が追いついていない面がある。特定アーティストのファンが何時間も前方に居座ることを物理的に防ぐ仕組みが必要です。
次に異文化ファン層への事前アナウンス。ソロライブやワンマンしか経験がないファンにとって、フェスのマナーは「知らなかった」というケースも多い。Echoes Baaはタイムテーブルと撮影ガイドラインは事前公開していましたが、フェス特有のマナー(地蔵禁止、場所の譲り合い等)まではカバーされていなかった。
チケット購入時やSNSでの事前告知で、フェス特有のルールを明確に伝える工夫は運営の責任でもあります。
今回の件で星街すいせい自身も「事前通達の不足は認める」と話しています。アーティスト側が「フェスでのマナーはこうだよ」と事前に発信する流れは、今後もっと一般的になるはずです。
THE FIRST TAKEアーカイブで見る「あの夜のステージ」
騒動とは別に、肝心のパフォーマンスがどうだったのかという話。CENTRAL 2026はTHE FIRST TAKEとの大型コラボで全ステージを世界同時生配信しており、4月17日から期間限定でアーカイブ配信が開始されています。星街すいせいのEchoes Baaパフォーマンスは4月19日20時から4月26日23時59分までの限定公開。
セトリは「プリマドンナ」に始まり、「もうどうなってもいいや」「月に向かって撃て」「みちづれ」「AWAKE」「ムーンライト」「綺麗事」と中盤を構成。終盤は代表曲「Stellar Stellar」からツミキ提供の「ビビデバ」「ソワレ」へと続く全10曲。生バンドの演奏と夜の野外ステージという組み合わせは、VTuberのライブイメージを覆すものだったと各メディアが報じています。
ライブレポートでは「ステージ上には生演奏するバンドの影とステージ中央で熱唱する星街の姿があり、圧倒的な歌唱力にフィールドから大きな歓声が上がった」と伝えられています。問題を起こした一部のファンの行動とは裏腹に、パフォーマンス自体は文句なしの成功だった。だからこそ余計にもったいない。
これからフェスに行く星詠みへ
9月から始まるアリーナツアー「Once Upon a Stellar」はソロ公演なので、今回のような問題は起きにくい。でも星街すいせいが今後もフェスに呼ばれる可能性は高いし、むしろそうあるべきです。
フェスに行くなら、推しの出番以外も楽しむ覚悟を持って行ってほしい。知らないアーティストのステージに身を任せてみる。ノれなくても手拍子くらいはする。前方にいるなら、そのアーティストのファンと同じ空間を共有している自覚を持つ。それが推しの評判を守ることにもなる。
星街すいせい本人が言った通りです。他のアーティストにリスペクトできない人間は、推しのライブに来る資格もない。
管理人のひとこと
正直、すいせいがここまでハッキリ言ったのは良かったと思います。アーティストが自分のファンを叱るのって相当な覚悟がいる。でも今の星街すいせいの立ち位置──個人事務所を構え、アリーナツアーを控え、フェスの大トリを任される存在──だからこそ、言える言葉だったんだろうなと。
フェス文化って、知らない音楽に出会える場所だからこそ価値がある。推しだけ見て帰るなら、それはフェスじゃなくてワンマンでいい。せっかく羊文学もMAISONdesも同じ日にいたんだから、聴けばよかったのに。もったいない。
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