「ホロライブ オワコン」で検索してこの記事にたどり着いた方、正直に言います。その検索、定期的にトレンド入りするエバーグリーンキーワードです。2021年にも、2023年にも、2025年にも、判で押したように同じ議論が繰り返されている。「今度こそ本当に終わりだ」と毎回言われて、毎回終わっていない。
ただ、だからといって「アンチが騒いでるだけ」で片付けるのもフェアじゃない。衰退を感じる根拠がまったくのゼロかと言われれば、そうでもないからです。卒業ラッシュがあった。ホロスターズは縮小した。同接が目に見えて減った時期もある。「なんかちょっと前より勢いなくない?」という肌感覚は、別に的外れでもない。
問題は、その肌感覚を「オワコン」という極端なラベルに変換するところにある。今回はできるだけ数字を並べて、ホロライブが本当に「衰退」しているのか、それとも別の何かが起きているのかを冷静に検証してみます。
そもそも「オワコン」はいつから言われているのか
Googleトレンドで「ホロライブ オワコン」の推移を見ると、面白いことがわかります。このキーワード、2020年の時点ですでに検索されている。ホロライブが爆発的に成長していた真っ只中で、です。当時はアンチがにじさんじとの対立文脈で使い始めたのがきっかけでした。
その後も卒業や炎上のたびにスパイクが立ち、2024年末〜2025年初頭の卒業ラッシュ期に最大の山が来た。で、2026年4月の今もしっかり検索されている。つまり「ホロライブ オワコン」は特定の時期の現象ではなく、常に一定の需要がある検索クエリだということです。
これはホロライブに限った話ではなくて、一定以上の知名度があるコンテンツには必ず「〇〇 オワコン」がセットでついてくる。「YouTube オワコン」「Twitter オワコン」「ニコニコ オワコン」、全部同じ構造。人気があるからこそアンチも生まれるし、ちょっとした下降局面を捉えて「ほら見たことか」と言いたい層が常に存在する。注目度の裏返しだと思えば、むしろ健全とすら言えます。
登録者数と視聴時間──数字はホロライブの「衰退」を示しているのか
「オワコン」を検証するなら、まず見るべきは数字です。感情論ではなくデータで語りましょう。
ホロライブプロダクション傘下のYouTubeチャンネル総登録者数は、2026年時点で数千万規模。これはVTuber事務所としては依然として世界トップです。個人チャンネルでも、宝鐘マリン、兎田ぺこら、白上フブキ、星街すいせいといった面々が軒並み200万〜300万超。がうる・ぐらに至ってはVTuber全体で最多クラスの登録者を持っています。
「でも登録者数って過去の遺産でしょ?大事なのは今の視聴時間じゃない?」という指摘はその通り。で、視聴時間データを見ても、ホロライブは依然としてVTuber事務所の中でトップです。にじさんじ、ぶいすぽっ!、その他個人勢を含めた比較でも、総視聴時間ベースではホロライブが頭一つ抜けている状況が続いている。
ただし、ここで重要なのは「伸び率」の話。2020年〜2022年のホロライブは、毎月のように登録者が増え、同接記録が更新され、新しいミームが生まれていた。あの時期の成長率と比較すれば、今の数字は確かに「鈍化」しています。でも、成長率が鈍化することと衰退は全く別の現象です。
スタートアップが年率300%で成長するフェーズから、安定企業として年率10〜20%で成長するフェーズに移行する。これを「衰退」と呼ぶ人はいません。ホロライブに起きているのは、まさにこれと同じ構造の話です。
Cover社の決算が示す「衰退」とは正反対の現実
ネットの空気感と実際のビジネスの数字が乖離しているケースは珍しくないですが、ホロライブの場合はその乖離がかなり激しい。
カバー株式会社の2025年3月期(2025年度)決算は、売上高302億円で過去最高水準を記録しています。前年度比でも大幅な成長。しかも伸びているのがYouTubeのスパチャではなく、ライブイベントの動員数とグッズ・マーチャンダイジングの売上。hololive SUPER EXPOやhololive fes.の規模は年々拡大していて、幕張メッセの複数ホールを埋める規模にまで成長しました。
「オワコン」の企業が売上302億円を叩き出して過去最高を更新する。これは論理的に成立しない。「YouTubeの数字が落ちた=オワコン」という認識がいかに一面的かがわかる数字です。
カバーの決算で特に注目すべきは収益構造の変化です。初期のホロライブは、YouTubeのスパチャとメンバーシップに収益を依存していた。でも今は、グッズ、ライブ、企業案件、IP展開と収益源が多角化している。配信プラットフォームの一つであるYouTubeの数字だけを見て「終わった」と断じるのは、デパートの1階の売上だけ見て「このデパートは潰れる」と言うようなもの。全体像が見えていない。
ちなみにライバルのANYCOLOR(にじさんじ)の方は、同時期に減収減益の局面がありました。「VTuber業界全体が衰退している」のではなく、事務所によって明暗が分かれているというのが実態に近い。そしてホロライブは「明」の側にいます。
「衰退」の根拠とされるもの──卒業・ホロスタ・同接バグ
「オワコン」を主張する人たちにも、一応の根拠はあります。ここではよく挙げられるものを一つずつ検証してみます。
根拠1:卒業ラッシュ
2024年末〜2025年にかけて、ホロライブから複数のタレントが卒業しました。これを「崩壊の兆し」と捉える声は確かに大きかった。推しがいなくなるショックは理解できるし、立て続けだとどうしても「組織に問題があるのでは」という疑念が湧く。
ただ、冷静に見ると卒業はホロライブだけの現象ではない。にじさんじでも同時期に卒業・契約解除が相次いでいたし、VTuber業界全体として「初期メンバーの活動年数が限界に近づいている」という構造的な問題があります。3年、4年、5年とバーチャルの姿で配信を続けることの精神的・肉体的な負荷は、外から見る以上に大きい。業界の成熟に伴う自然な人材の入れ替わりであって、ホロライブ固有の「崩壊」ではありません。
根拠2:ホロスターズの縮小
カバーが男性VTuberブランド「ホロスターズ」の再編・縮小を行ったことも、「事業が傾いている証拠」として引用されることがあります。しかしホロスターズはもともと苦戦していたブランドです。ホロライブ本体の女性タレントと比較して登録者数・同接ともに大きな差があり、事業として厳しい状況が長く続いていた。
不採算事業を整理するのは経営判断として合理的で、むしろ「傷が深くなる前に手を打った」と評価すべき動き。選択と集中は衰退の兆しではなく、成熟した企業の戦略です。リソースをホロライブ本体やEN、DEV_ISといった成長領域に集中させる判断は、決算の数字を見る限り正しかったと言えます。
根拠3:同接(同時接続数)の減少
「ホロメンの同接が昔より減った」という指摘は、数字だけ見れば事実の部分もあります。ただし、ここには大きな落とし穴がある。YouTubeの同接カウントにバグがある問題です。
YouTubeの同時接続者数表示は、2023年頃から不安定になっていることが多くの配信者から報告されています。表示上の数字と実際の視聴者数に乖離がある、いわゆる「同接バグ」。これはホロライブだけでなく、YouTube配信者全体に影響している問題で、プラットフォーム側の技術的な問題であってコンテンツの人気低下とは無関係です。
もちろん同接バグだけで全てを説明できるわけではないけれど、「同接が減った=人気が落ちた」という単純な等式が成り立たないのは確か。視聴時間やチャンネル総再生数など、複数の指標を見なければ実態はわかりません。そして複数の指標を総合すると、「激減」ではなく「横ばい〜微減」が実態に近い。
VTuber市場全体は拡大している──「斜陽産業」ではない
ホロライブ単体の話から少し引いて、VTuber市場全体を見てみます。
市場調査によれば、グローバルVTuber市場の規模は2024年に約14億ドル(約2,100億円)。そしてこれが2030年には38.5億ドル(約5,800億円)に達すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は18.15%。「オワコン」どころか、かなりの成長産業です。
この成長の原動力は、配信活動そのものというよりも、IPビジネスとしてのVTuberの価値が認められてきたこと。企業案件、グッズ、ライブイベント、ゲーム出演、アニメ化──VTuberのキャラクターIPが多方面に展開される時代に入っている。ホロライブはまさにこの流れの最前線にいるわけで、市場拡大の恩恵を最も受ける位置にいます。
「VTuberブームは終わった」という声もありますが、これは「ブーム」と「市場」を混同している。ブームは一過性のもので、確かに2020〜2022年のような爆発的な注目は落ち着いた。でも市場は拡大し続けている。ラーメンブームが終わっても、ラーメン市場が消えないのと同じです。VTuberは一時的な流行から定着したエンタメジャンルに移行した段階にあります。
「衰退」ではなく「成熟」──ホロライブに何が起きているのか
ここまでのデータを整理すると、見えてくるのは「衰退」ではなく「成熟段階への移行」という結論です。
成長期のホロライブは、毎月が文化祭みたいなものでした。新しいメンバーがデビューするたびにお祭り騒ぎ、同接記録が更新されるたびに大盛り上がり、切り抜きがバズって新規ファンが雪崩のように入ってくる。あの頃の「勢い」を基準にすれば、今は確かに落ち着いている。
でも「落ち着く」と「衰退する」は違います。
成熟段階に入ったホロライブに起きていることを列挙すると、こんな感じ。
売上は過去最高を更新している。リアルイベントの規模は拡大している。海外展開は加速している。企業案件は大手との提携が増えている。IPとしての価値は上がっている。新世代(ReGLOSS、DEV_IS、Justiceなど)の育成も進んでいる。
一方で、初期メンバーの卒業は避けられない。新規ファンの流入速度は爆発期に比べれば緩やかになっている。YouTube配信の同接は天井が見えてきた。コミュニティ内の空気も、新鮮さよりも安定感が前面に出るようになった。
これはどんなコンテンツでも通る道です。AKB48も、ジャニーズ(現STARTO)も、ニコニコ動画も、全盛期と比較すれば「衰退した」と言えるかもしれない。でもAKB48のメンバーはまだ活動しているし、ニコニコは今でも独自のポジションを持っている。「全盛期と比べてどうか」は、そのコンテンツが生きているかどうかとは別の問題です。
ホロライブの場合は、成熟段階に入りながらもビジネスの数字は過去最高という、かなり健全な状態。これを「オワコン」と呼ぶのは、さすがに雑すぎる。
それでも「オワコン」と言いたい人がいる理由
データを並べても、「いや、でもオワコンだと思う」と感じる人はいるでしょう。その気持ちも、実は理解できます。
「オワコン」という言葉は、客観的な市場分析ではなく主観的な熱量の低下を表現するものだからです。「自分にとっての全盛期が終わった」「あの頃の熱狂がもう戻ってこない」──そういう個人的な感覚を「オワコン」という言葉に乗せている。これ自体は別に間違っていない。
推しが卒業した人にとっては、確かにホロライブの一部は「終わった」のかもしれない。毎日配信を追いかけていた人が忙しくなって離れた結果、「最近ホロライブの話題を見なくなったな」と感じるのも自然なこと。自分のTLに流れてこなくなった=世の中から消えた、という錯覚は誰にでも起こり得ます。
あとは単純に、対立煽りの道具として使われているケースも多い。特にVTuber界隈は箱同士の対立構造が根強くて、「ホロライブ オワコン」はにじさんじファンや他箱ファンの一部が使う定番フレーズになっている面がある。逆もまた然りで、「にじさんじ オワコン」も同じくらい検索されています。お互い様。
問題は、こういった主観や対立煽りが「客観的事実」のように語られてしまうこと。SNSではインプレッションを稼ぐために過激な表現が選ばれがちで、「成長が緩やかになった」より「オワコン」の方がバズる。バズりやすい言葉が真実とは限らないというのは、ネットリテラシーの基本中の基本です。
管理人のひとこと
正直、ホロライブのブログを運営している人間が「オワコンじゃないです」と書いてもポジショントークにしかならないのは自覚しています。でも決算の数字は嘘をつかない。売上302億円、過去最高。この事実の前では「オワコン」はちょっと苦しい。
個人的には、全盛期の熱狂が落ち着くのは寂しいけど、「毎日がお祭り」の状態がずっと続く方が不自然だと思っています。安定して楽しめるコンテンツであり続けてくれれば、それで十分。「オワコン」と言われ始めてからが本当の地力が問われるフェーズで、ホロライブはそこを越えつつあるように見えます。


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